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こんにちは!
経済産業大臣登録 中小企業診断士
船越ビジネスコンサルティング代表
船越です。
今回は棚卸資産の話です。
一見、棚卸資産と聞くと難しく感じるかもしれませんが、経営者にとって在庫の考えは絶対に必要となってきます。
また、棚卸資産だけではなく、会社数字自体に強くなったほうがいいです。
会社数字は経営者にとって、切っても切れない関係ですから。。
また、数値計画や事業計画をしっかり作成するには、数字を理解していなければならないうえ、資金繰りにも必要になるからです。
ということで今回は、
- 棚卸資産について
- 棚卸資産回転期間と回転率の計算方法
- 棚卸減耗損と棚卸資産評価損
- 運転資金とは?棚卸資産と資金繰りの関係
以上の内容となります。
棚卸資産は運転資金とも関係してきますので、一緒にお話をしていきますね!
棚卸資産とは?
「棚卸資産」とは何かと言いますと、ご存知である “在庫” ですね。
そして、在庫には色々な種類があるのですが、
- 商品、製品
- 半製品、仕掛品
- 原料及び材料
- 器具および備品その他の貯蔵品
これらの在庫は会社にとっては大切な資産です。
なので、会社の資産と言えることから、下図のように貸借対照表(BS)に計上されるときに「棚卸資産」と表記されるんですね。
棚卸資産の回転期間と回転率の計算方法
「棚卸資産回転期間」とは、売上高に対して棚卸資産がどれくらいの期間で販売されたかを計る指標です。
棚卸資産回転期間は、期間が短いほど商品を仕入れてから在庫となっている期間が短く、売れていることを表します。
逆に期間が長い場合は在庫が多く、売れてなくて保管されたままの状態である可能性が高くなります!
なので、商品別に計算することで売れ筋や売れ残り商品を把握することも可能になるんですね。
ただ、一般的には棚卸回転期間は短いほうが良いのですが、ビジネスモデルによっては長くなる会社も存在します。
例えば、他社よりも在庫を持っていることが強みなアパレル会社の場合、回転期間は長くなる傾向があります。
そして計算方法は、
- 月数の場合:棚卸資産(在庫)÷(売上高 ÷ 12ヶ月)
- 日数の場合:棚卸資産(在庫)÷(売上高 ÷ 365日)
例として、年間売上高 1,000万円 で棚卸資産 100万円 の時の棚卸資産回転日数は、
100万 ÷ (1,000万 ÷ 365) = 36.5 日
となり、約36.5日で在庫が無くなっていることが分かりますね!
そして「棚卸資産回転率」は一定期間内に在庫が無くなる回数を示し、在庫が何回入れ替わっているかが分かる指標です。
なので、棚卸資産回転率が高いと在庫の入れ替わりが早く、棚卸資産回転率が低いと在庫として長く残っていることを表します。
ただ、回転率は高ければ良いわけではなく、販売機会ロスをしている可能性もあります。
なので、一般の平均値を参考にするより、自社のビジネスモデルではどれぐらいが適正なのかを把握する方が大事です!
そして計算式ですが、
- 棚卸資産回転率 = 売上高 ÷ 棚卸資産(在庫)
1年の平均を知りたい時、厳密に計算したい時は棚卸資産を期首と期末を足して2で割りますが、簡易的に計算するのであれば平均値を使わなくても大丈夫です!
棚卸減耗損と棚卸資産評価損
ここでは例として、Tシャツを100枚仕入れて、お客さんに50枚販売した場合を想定します。
この場合、50枚が在庫として「棚卸資産」に計上されることになりますが、ここでのポイントは、在庫が本当に50枚が存在するのかということです!
貸借対照表(BS)には、実在する商品しか計上してはいけないので、問題なければ50枚が在庫として残っているはずですが、棚卸をして実際の枚数を確認する必要があります。
結果、例えば2枚が何らかの理由でなくなっていた場合には、差額の2枚は「棚卸減耗損」という損失となり、実際に「棚卸資産」には48枚しか計上されないことになります。
そして、もう1つのポイントは、販売価額が下がっていないかという点です!
例えば、流行が終わった結果、在庫として長期に残ってしまった場合、1シーズン前のTシャツは、販売価額を下げないと売れないと思います。
また、店頭でのセールやファミリーセールで販売するとなると、値下げしないと売れないため販売価格は当然下がりますよね?
決算書には、このような販売価額の下落を反映させて実際価格を表示させる必要があります!
反映させないと、株主や金融機関に誤解を与えてしまうことや、故意に過剰な資産を計上していると判断されてしまいますから。。
なので、「棚卸資産」については、当初仕入れた価額よりも、販売価額のほうが下落しており、含み損がある場合には、「棚卸資産評価損」を計上して実態を損益計算書に反映させることになります。
では、計算例として、Tシャツを1枚1,000円で仕入れて2,000円で販売した結果、50枚が帳簿の記録として残ったと仮定します。
そして、棚卸を行った結果、48枚しか残っていませんでした。 シーズンが終わってしまい、現在は1,000円でないと売れない状況なので、仕入れ値を600円に下げることになりました。
- 棚卸資産:48枚 × 600円 = 28,800
- 棚卸減耗損:2枚 × 1,000円 = 2,000
- 棚卸資産評価損:(1000円ー600円) × 48枚 = 19,200
この場合、貸借対照表(BS)の「棚卸資産」には、28,800が計上され、損益計算書(PL)には「棚卸減耗損」が2,000、「棚卸資産評価損」19,200が計上されることになります。
運転資金とは?棚卸資産と資金繰りの関係
「運転資金」とは、事業における立替資金のことです。
例えば、商品を販売した場合、代金の回収は数ヵ月後になる掛売り形式が一般的です。
ただ、その一方で、その販売のために行った仕入れの支払いを、売上代金の回収よりも先にしなければならないことがありますよね?
その結果、売上代金が回収されるまで、先行して資金を負担して支払わなければなりませんが、この資金負担が運転資金です! 運転資金がなくなれば最悪、会社は倒産します。
なので、運転資金は非常に大切なことなのですが、少し難しくなりますので概念だけでも理解しておいてください!
- 売上債権:売掛金、受取手形
- 棚卸資産:商品・製品、仕掛品、原材料
- 仕入債務:買掛金、支払手形
- 運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務
上の図の棚卸資産100(左図)が棚卸資産200(右図)に増加した場合、売上債権、売上債務が同額であれば、単純に運転資金が100増加します。
いつでも販売できるように、ある程度の棚卸資産は手元に持っておかないといけませんが、一方で、棚卸資産は、本来であればいろんな用途に使えたはずの資金を特定の製品や材料に変えたものです。
なので、あまり過剰に棚卸資産を持ちすぎると、資金を効率的に使えなくなってしまいます。
また、運転資金の不足分を借入金や利益でまかなわなければなりませんが、運転資金が用意できないと、資金ショートとなって、最悪の場合、倒産してしまうことになります!
このように、在庫過多が資金繰りに大きく影響してくるんですね。
棚卸資産と経常利益の意外な関係性
ここからは補足ですが、銀行からの借入金の返済には元金プラス、利息が必要です。
この利息は営業外費用として計上されるため、借入金が多ければ多いほど、支払利息が増加し、結果として経常利益の減少に繋がります。
先ほど運転資金で触れましたが、在庫が増加した分の運転資金不足を借入金でまかなう場合、支払利息の増加で利益が減少することになるんですね!
なので、いくら運転資金が足りないからといって、借入ばかりしていると元金返済に加え支払利息が重くのしかかり、しかも利益が減少することになるので、経営自体が悪化することになります。
棚卸資産増加
↓
運転資金増加
↓
借入金増加、利益減少
↓
資金繰り悪化
↓
経営破綻
こうならないように、棚卸資産に関心を持っていただければと思います!
➡ 損益分岐点とは?社長に知って欲しい安全余裕率と計算方法、例題まで
最後に
今回は「【経営に必要な棚卸資産】棚卸減耗損と棚卸資産評価損についても解説」として、
- 棚卸資産について
- 棚卸資産回転期間と回転率の計算方法
- 棚卸減耗損と棚卸資産評価損
- 運転資金とは?棚卸資産と資金繰りの関係
以上のお話をしました。
少し難しい内容のところもあったと思いますが、経営するのに大切な話です!
なので、他の記事も参考にしながら、数字のことを理解していただければと思います。
以上となりますが、今回の記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです!
➡【経営に重要な減価償却の話】お金と減価償却費の関係性
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