こんにちは!
中小企業診断士で下町のコトラーこと、船越です。
日々、一所懸命に汗を流してビジネスを頑張っていらっしゃる小規模事業者の社長さんとお会いしていると、事業が少しずつ軌道に乗ってきたタイミングで、このようなご相談をよくいただきます。
「船越さん、おかげさまで売上も安定してきたし、そろそろ法人化したほうがいいですかね?」
「いい流れですね!素晴らしいことですし、ビジネスを次のステージに進めるためにも、ぜひ前向きに考えましょう!」
と、いつもなら二つ返事で背中を押したいところなのですが、、実は
「ちょっと待ってください!」
と一度立ち止まっていただくケースがあるんです。
特に、「お父さんやお母さん、あるいは親族名義の土地や建物を使って商売をしている」、あるいは「実家の一部をリフォームしてオフィスや店舗にしている」という社長さんは、法人化の書類を提出する前に絶対に知っておかないといけない重要なポイントがあります。
ここを知らないまま勢いだけで法人化(法人成り)を進めてしまうと、後から税務署に「え、社長、それアウトですよ。しっかり税金を払ってくださいね」と言われるハメになります!
想像するだけでも怖いですよね笑。。
今回は、身内の資産を借りてビジネスをしている社長さんが必ず直面する「使用貸借」の落とし穴と、そのリスクを回避した上で法人化するリアルなメリットについて、できるだけ分かりやすく、専門用語を噛み砕いてお伝えします!
そもそも「使用貸借」って何?個人と法人の大きな違い
まず、言葉の意味から整理していきます。
身内からタダ、もしくは固定資産税程度の格安の金額だけで土地や建物を借りて使うことを、法律上「使用貸借(しようたいしゃく)」と言います。
これに対して、世間一般の相場の賃料(権利金や毎月の家賃など)をきっちり支払って借りる契約のことを「賃貸借(ちんたいしゃく)」と呼びます。
個人事業主のうちは、親御さんの土地に自分で事務所や工場を建てたり、実家の一室をそのままオフィスにしたりして、そこをタダで使わせてもらっていても、税務上で大きなお咎めを受けることはほとんどありません。
身内ならではの信頼関係と、ありがたい厚意によって成り立つ素晴らしい仕組みですね。。
ところが、事業を「法人(会社)」にした瞬間に、この前提がガラガラと音を立てて変わってしまいます!
なぜなら、法律や税金の視点に立つと、「個人」と「法人」は完全に別人格として扱われるからです。
たとえ社長があなた1人だけで、従業員もいない「おひとり様会社」であったとしても、税務署から見れば、その会社は親御さんにとって「どこか知らないよその企業」と全く同じ扱いになります。
「いくら自分の子どもの会社だからって、よその会社に価値ある土地や建物をタダで貸すなんておかしいよね?普通なら家賃をもらうはずだし、そこには何か目に見えない特別な利益が動いているんじゃないの?」
税務署はこのような冷徹な目で見てくるわけです。
この視点の変化を知らないことが、トラブルの引き金になります。
知らないと怖い!法人化での「使用貸借」の注意ポイント2つ
では、個人事業主時代と同じ感覚のまま、法人に土地や建物を「使用貸借」で引き継ぐと、具体的にどのような問題が起こるのでしょうか?
特に注意が必要なリスクを2つに絞って解説します!
① 借地権の認定課税というトラップ
親御さんの土地に、今度は会社(法人)の名義で新しく建物を建てたり、あるいは今まで個人事業主として使っていた建物の名義を法人に移転したりする場合に、最大の注意が必要です。
通常、日本の法律や税制では、他人の土地に建物を建ててビジネスをする場合、そこには「借地権(土地を使う強い権利)」が発生するものと考えます。
そして、その借地権には非常に大きな経済的価値がある、とみなされます。
もし、あなたの法人が、地主である親御さんに「権利金」も払わず、毎月の「地代」も世間相場よりはるかに安い金額(あるいはタダ)で土地を借りて建物を建ててしまうと、税務署は次のように解釈します。
「法人は地主から、本来なら大金を払って手に入れるべき借地権を、タダでプレゼント(贈与)されたんだな」
これが世に言う「借地権の認定課税」です。
これが認められてしまうと、法人側にはお金を1円も受け取っていないにもかかわらず、帳簿上で「受贈益(もらった利益)」という莫大な利益が計上され、その利益に対して容赦なく多額の法人税が課されるリスクが出てきます。
手元にキャッシュがないのに税金だけが請求される、非常に恐ろしいトラップですね。。
「じゃあ、親の土地を使って会社に建物を建てるのは無理なの?」
と思われるかもしれませんが、安心してください!
回避するルートはあります。
これを防ぐには、「土地の無償返還に関する届出書」という書類を、法人化して建物を建てる(または移転する)前に、あらかじめ税務署に提出しておくことが必要不可欠です。
この書類は、「将来、法人がこの場所を引き払うときは、土地をタダで親に返します。だから法人のものになった借地権なんて最初からありませんよ」という約束を国と交わすものです。
これを出しておくことで、理不尽な課税を免れることができます。
知っているか、知らないか?
ただそれだけで会社のお金の残り方が大違いになるポイントです!
② 相続時の「小規模宅地等の特例」への影響
もう一つの落とし穴は、今すぐの問題ではなく、将来その土地をあなたが相続することになったとき、つまり事業承継のタイミングで牙をむくリスクです。
日本の相続税には、残された家族や事業を守るためのとても優しい特例があります。
それが「小規模宅地等の特例」です。
個人事業主が親御さんの土地を使用貸借で借りて、そこでコツコツと地道に商売を続けていた場合、親御さんに万が一のことがあったとき、その事業用の土地の相続税評価額を最大80%も下げてくれる(特定事業用宅地等)という、非常に強力な仕組みです。
これがあるおかげで、高い相続税を払うために土地を切り売りしなくて済み、事業を継続することができます。
ところが、この土地を「法人への使用貸借」に変えてしまうと、この特例を使うためのハードルがグッと跳ね上がります。
法人の場合は、単なる使用貸借では特例が認められず、法人が親御さんに「相当の地代(固定資産税の概ね3倍程度)」を支払って正式な賃貸借契約を結んでいるか、あるいは社長であるあなたがその会社の株式を過半数以上保有しているかなど、非常に細かい条件(特定同族会社事業用宅地等の要件)をすべてクリアしなければならなくなります。
「良かれと思って法人化したら、将来の相続のときに特例が使えなくなり、相続税が何倍にも跳ね上がってしまった・・」なんてことになったら、それこそ目も当てられません。。
※これらの仕組みや対策は、国税庁の通達や税法に基づいた非常にデリケートな内容であり、社長さんのご家族の状況や土地の評価額によって判断が大きく変わります。
法的リスクを避けるためにも、独断で進めず、必ず信頼できる税理士さんや、当事務所に事前にご相談ください。
追記:【重要】じゃあ個人のままでいいの?「特例が使えなくなる」最大の罠
「そんなにややこしいなら、法人化なんてしないで個人事業主のままで事業承継したほうが安全なんじゃない?」
そう思われた社長さん!
実は、「個人事業主のまま、身内のやり取りだからと現状維持で放置する」のが一番危ないんです。
なぜなら、個人事業主のまま次の代へ事業を引き継ごうとするとき、この「特定事業用宅地等の特例」の条件をクリアするのは至難の業だからです。
一点だけ補足しておくと、もし社長さんが親御さんと「生計を一にしている(お財布を一つにして一緒に暮らしているなど)」という場合は、例外的にタダ借り(使用貸借)のままでも個人の特例(80%減額)が認められるケースがあります。
ですが、親御さんと別居してお財布も完全に分かれている場合は、この例外は一切使えません。
ここが大きな分かれ道になります。
さらに、この特例を次の代で使うためには、相続した人(あなたや後継者)が、親御さんが亡くなる前からその事業に従事しており、かつ亡くなった後も「申告期限(10ヶ月後)までその事業をずっと継続して、土地を保有し続けなければならない」という非常に厳しい継続要件があります。
もし、親御さんが亡くなったタイミングで「もう個人事業は畳んで、これを機に会社にしよう」と法人化してしまったり、あるいは事業を一時的にストップしたりすると、その瞬間に特例の権利が完全に消滅します。
最大80%引きの権利がゼロになり、土地はすべて「自用地(じようち=何の減額もない100%の価値)」としてフルに評価され、多額の相続税がそのまま重くのしかかってくることになるんですね。
「じゃあ、個人事業主のまま、税務署から文句を言われないように親にちゃんとした家賃を払う『賃貸借契約』に切り替えればいいの?」
と思うかもしれませんが、実はこれも大問題なんです!
個人のまま相場通りの家賃を払う賃貸借にしてしまうと、あなたが親御さんからその土地を相続した瞬間に、「自分が自分に土地を貸す」というおかしな状態(法律上の混同)になってしまいます。
自分自身に土地を貸すことはできないため、貸し付け関係がそこで消滅し、国の特例(減額)が1円も使えなくなってしまうんです!
つまり、土地は100%の価値(自用地)としてフルに評価され、多額の相続税が重くのしかかってきます。
さらに、個人のまま家賃を払うと親御さんには「不動産所得」が発生するため、親御さんの毎年の確定申告の税金や医療保険料が跳ね上がるという二次災害まで引き起こしかねません。
「個人事業主のままタダで借り続ける(使用貸借)と、代替わりのタイミングで特例が使えなくなるリスクが極めて高い」 「かと言って、個人のまま家賃を払う(賃貸借)と、特例の減額幅が50%に縮み、土地の自用地評価リスクや親の税金問題に直面する」
まさに進むも地獄、退くも地獄のジレンマですよね。。
だからこそ、個人事業主のまま場当たり的に対応するのではなく、「法人化という強力な器を使い、特例の要件(特定同族会社事業用宅地等)をあらかじめ完全に満たすように、会社と土地の関係を今から美しくデザインしておく」ことが、社長さんとご家族の財産、そして事業を未来へ守る唯一の解決策になるんです!
それでも法人化したほうがいい!リアルなメリット4つ
ここまで少し怖い話が続いてしまったので、「なんだか法人化するのが不安になってきたな・・」と弱気になってしまった社長さんもいるかもしれません。
でも、ちょっと待ってください!
今お話ししたような「使用貸借の落とし穴」さえ事前に把握して、正しい手続きの専門家(税理士や中小企業診断士など)と一緒に事前の対策を打っておけば、法人化がもたらすメリットはリスクをはるかに上回ります。
ここからは、個人事業主を卒業して法人化を選ぶべき、リアルな4つのメリットを熱く語っていきますね!
① 税金のコントロールができる(圧倒的な節税の可能性)
個人事業主のままでいる場合、事業で稼いだ利益(所得)はそのまま社長個人の所得となり、「所得税」が課されます。
ご存知の方も多いと思いますが、日本の所得税は稼げば稼ぐほど税率が上がっていく「累進課税」です。
利益が大きくなると、住民税と合わせて最高税率はなんと約55%にまで達します。
せっかく必死に稼いだ利益の半分以上が税金で持っていかれるなんて、モチベーションも下がってしまいますよね。。
一方で、法人税の税率はほぼ一定です。
中小企業であれば、利益のうち800万円以下の部分については実質20%程度、それを超える部分でも30%程度に抑えられます。
さらに大きな違いは、法人化すると、社長は会社から「役員報酬」としてお給料を受け取る形になる点です。
この役員報酬には、サラリーマンと同じように「給与所得控除」という、いわば“概算の経費”のような国が認めた一律の控除が適用されます。
つまり、会社の利益をそのまま個人で受け取るよりも、会社とお給料にうまく分散させることで、国に納める税金の総額を劇的に引き下げることができるのです!
また、専従者として一緒に働いてくれている奥さんやご家族を法人の役員に迎え、役員報酬を適切に分散させるという高度なコントロールも可能です。
使える武器の数が、個人事業主とは比べものになりません。
② 社会的信用が桁違いに上がる(ビジネスの壁を超える)
小規模事業者がビジネスを大きくしていく上で、実はこれが最も強力なメリットになるケースが多々あります。
世の中の大きな企業や、官公庁などの行政機関には、「コンプライアンス(法令遵守)や取引の安全性を守るため、個人事業主とは直接の取引をしない(口座を開設しない)」という明確な社内ルールを設けているところが本当にたくさんあります。
せっかく良い商品やサービスを持っていて、相手の担当者と意気投合しても、「個人さんとは契約できないんです」という理由だけで、ビジネスのチャンスを逃してしまうのは悔しすぎますよね。。
また、事業が大きくなって「新しい仲間(従業員)を採用したい!」と思ったときにも、法人化の効果は絶大です!
求人票を出すにしても、「個人商店」と「〇〇株式会社」では、求職者本人はもちろん、そのご家族(親御さんや配偶者)が受ける安心感が全く違います。
さらに、事業資金を借り入れるために銀行や信用金庫といった金融機関と交渉する際にも、決算書という形で経営状態がオープンに示される法人のほうが、圧倒的に信用を得やすく、融資の相談がスムーズに進みます。
「法人にしてから、今まで会えなかったような大手の取引先と繋がることができた」という社長さんは、私の周りにもたくさんいますよ!
③ 経費の認められる範囲が広がる
個人事業主のときには「それはプライベートの支出でしょ」と税務署からハネられていたものが、法人になることで正当な「経費(損金)」として認められる選択肢が一気に広がります。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 出張旅費規程の活用:あらかじめ会社で旅費のルール(規程)を作っておくことで、遠方への出張の際、実費とは別に「日当(出張手当)」を支給することができます。この日当は、会社にとっては経費になり、受け取る社長個人には所得税がかからないという、非常に優れた仕組みです。
- 法人名義の生命保険:社長に万が一のことがあったときに会社や家族を守るための生命保険について、契約者を法人にすることで、支払う保険料の一部または全般を会社の経費として処理することが可能になります。
- 退職金の積み立て:将来、社長が第一線を退くときのための「退職金」を、毎月コツコツと会社の経費として積み立てていくことができます。
このように、ただ税金を払うだけでなく、会社の未来や社長の将来を守るためにお金を賢く使いながら、同時に節税ができる選択肢が豊富に用意されているのが法人の強みです。
④ 万が一のときの「有限責任」で家族を守る
ビジネスの世界は何が起こるか分かりません。
どれだけ気をつけていても、予期せぬ景気の変動やトラブルによって、大きな借金を背負ったり、取引先から損害賠償を請求されたりするリスクはゼロにはできませんからね。。
もし個人事業主のままであれば、その責任は「無限責任」です。
たとえお店や工場を畳んだとしても、社長個人のプライベートな全財産(マイホームや、家族のための預貯金)をすべて投げ打ってでも、最後の1円まで借金を返し続けなければなりません。
しかし、法人化していれば、その責任は原則として「有限責任」に変わります。
万が一、会社が倒産するような事態になっても、社長個人が会社の借金の「連帯保証人(個人保証)」になっていない限り、社長個人が身銭を切って会社の債務を弁済する法律上の義務はありません。
※ただし、中小企業が銀行から融資を受ける際は、現在でも社長の個人保証を求められるケースが多いですが、最近は政府の指針で『経営者保証ガイドライン』が適用され、一定の条件を満たせば個人保証を外せる流れも加速しています。
何より、「大切な家族の生活基盤や住まいを、事業のリスクから物理的に切り離すことができる」というのは、日々プレッシャーと戦いながら舵取りをしている社長さんにとって、精神的にめちゃくちゃ大きな安心感に繋がります。
安心して打って出ることができる、これこそが経営者に必要な守りですね!
まとめ:法人化も事業承継も、やるなら「全体設計」が大事!
ここまで身内の土地を使った法人化の注意点をお伝えしてきましたが、難しい税金や法的な手続きの書類を見て、
「うわぁ、ややこしいな・・」
と頭を抱えてしまった社長さん、どうぞ安心してください!
土地の評価や具体的な税金計算といった専門的な実務は、提携している信頼できる税理士さんや専門家に丸投げして任せてしまえば大丈夫です。
社長にとって本当に大切なのは、そうした専門家に相談する前段階として、
「会社の未来をどう描くか」
「いつ、どんなスケジュールで後継者にバトンを渡していくか」
という事業承継の『全体設計』をしっかりデザインしておくことなんです。
どれだけ完璧な節税対策をしても、肝心の後継者育成や「明日からの経営の引き継ぎ」が置き去りになっていては、大切な会社を守ることはできません!
「節税の話は難しくて分からないけれど、後継者の育成や事業計画の立て方から一緒に整理したい」
「うちの会社の場合、いつまでに何を準備すればいいんだろう?」
そう気になった社長さん、まずは現状のモヤモヤをすっきりさせるために、お気軽にご相談ください。
難しい専門用語は使わずに、まずはお茶でも飲みながら、社長のこれからの夢や未来のバトンタッチについて楽しくお話ししましょう!
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以上となりますが、今回の記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです!

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